「え、また噛んじゃったの……」。0〜2歳児クラスで働く保育士なら、一度は経験したことがあるであろう「噛みつき・引っかき」。子どもたちの発達過程でよく見られる行動ですが、保護者対応も含めて、現場では対応に悩むことの多いテーマです。今回は、噛みつき・引っかきが起こる背景から、実際の対応手順、保護者への伝え方、日頃の予防策まで、保育士向けにまとめました。
この記事でわかること
- 噛みつき・引っかきが起こりやすい年齢と発達的な背景
- 起きてしまったときの具体的な対応手順
- 記録の残し方と、保護者への伝え方
- 日頃からできる予防策
この記事は、現役保育士(保育士歴6年)の「あやせん」が執筆しています。詳しいプロフィールは運営者情報をご覧ください。
【保育士向け】なぜ噛みつき・引っかきが起こるのか
噛みつきや引っかきは、特に1〜2歳児に多く見られる行動です。この時期の子どもたちは、まだ「言葉で気持ちを伝える力」が十分に育っていません。「イヤだ」「使いたい」「悔しい」といった感情を、言葉ではなく行動で表現してしまうのは、この年齢では自然な発達の一過程でもあります。
年齢によって傾向にも違いがあります。1歳前後では、まだ言葉そのものが少なく、興味の対象(おもちゃなど)への欲求がそのまま行動に出やすい時期です。2歳前後になると、自我が育つ一方で、思い通りにいかない苛立ちが噛みつきという形で表れることが増えてきます。
そのため、「しつけがなっていない」「その子が悪い子」という捉え方ではなく、「まだ気持ちを言葉にする力が育っていない」という発達的な視点を持つことが、対応の土台になります。
噛みつき・引っかきが起きたときの対応手順
①まず双方の安全を確保する
噛みつき・引っかきが起きたら、まず子ども同士を引き離し、それ以上のケガを防ぎます。周囲に他の子どもがいる場合は、落ち着いた声で場を整えましょう。
②噛まれた・引っかかれた子の手当てを最優先する
傷の状態を確認し、流水で洗う、冷やすなど、必要な処置を行います。皮膚が破れている場合は、感染予防のため消毒も行いましょう。内出血や腫れが強い場合は、看護師や主任にも報告し、必要に応じて受診を検討します。
③双方の気持ちを丁寧に受け止める
噛んでしまった子にも、「〇〇したかったんだね」「イヤだったんだね」と、まず気持ちを受け止めます。頭ごなしに叱るのではなく、「噛むと痛いんだよ」と、してはいけない理由を短くわかりやすく伝えましょう。長い説教は、この年齢の子どもには伝わりにくいため、シンプルな言葉を繰り返すのがポイントです。
④記録を残す
いつ、どこで、どんな状況で起きたかを記録しておくことで、パターンが見えてきたり、再発防止の手がかりになったりします。記録には「日時」「場所」「直前の状況(おもちゃの取り合いなど)」「対応内容」「保護者への連絡状況」を最低限含めておくと、後から振り返りやすくなります。
保護者への伝え方のポイント
噛みつき・引っかきの保護者対応は、園によって方針が分かれる部分でもありますが、一般的には次のような配慮が大切にされています。
- 噛まれた・引っかかれた側の保護者には:状況と対応内容を具体的に伝え、謝罪する。ただし、相手の子の名前は伏せるのが一般的な対応です。「お友だちとおもちゃの取り合いになった際に」など、状況は伝えつつ個人は特定しない形にしましょう。
- 噛んだ・引っかいた側の保護者には:事実を伝えつつ、「発達の過程でよくあること」という背景も添えて、不安を煽らない伝え方を心がけます。「園でもこのように対応しています」と、具体的な対応策も一緒に伝えると安心してもらいやすくなります。
「園としてどう対応したか」を具体的に伝えることで、保護者も安心感を持ちやすくなります。伝える際は、感情的にならず、事実と対応を淡々と共有する姿勢を意識しましょう。
日頃からできる予防策
①おもちゃの数や環境を見直す
人気のおもちゃが不足していると、取り合いから噛みつきにつながりやすくなります。同じ種類のおもちゃを複数用意する、活動スペースに余裕を持たせるなどの工夫が有効です。
②噛みつきが起きやすい時間帯を把握する
空腹時や眠い時間帯は、感情のコントロールが難しくなりがちです。お昼寝前、おやつ前など、そうした時間帯は、保育者がより注意深く見守るようにしましょう。
③代わりの表現方法を伝える
「イヤだったら、イヤって言ってごらん」など、根気強く言葉での伝え方を積み重ねていくことも、長期的な予防につながります。指差しやジェスチャーなど、言葉以外の伝え方を一緒に教えるのも効果的です。
④職員間で情報を共有する
「この子とこの子は、最近おもちゃの取り合いが多い」といった傾向を、担任だけでなくクラス全体の職員で共有しておくことで、事前に距離を調整するなどの予防的な関わりがしやすくなります。
よくある質問
Q. 噛みつきは何歳頃までよくありますか?
A. 個人差はありますが、1〜2歳児クラスで最も多く見られ、3歳前後になり言葉での表現が増えるにつれて自然と減っていく傾向があります。言葉の発達には個人差があるため、3歳を過ぎても続く場合は焦らず、その子のペースに合わせて関わりを続けることが大切です。
Q. 相手の名前を伝えるべきですか?
A. 多くの園では、相手の子の名前は伝えない対応が一般的です。トラブルの原因になりやすく、子ども同士の関係にも影響しかねないためです。「お友だちと」という表現にとどめ、状況と園の対応を具体的に伝えることを優先しましょう。
Q. 同じ子が繰り返す場合はどうすればいいですか?
A. まずは記録を振り返り、起きやすい時間帯や状況にパターンがないかを確認しましょう。空腹・眠気・環境の変化など、背景にある要因が見えてくることがあります。改善が見られない場合は、園内で情報を共有し、必要に応じて保護者や巡回相談などの専門機関に相談することも選択肢の一つです。
現場からのひとこと
「あーー!」と噛みつきを未然に防ぐこと10回、ついに噛んでしまった1回。。。思い出すだけで胸が苦しくなります笑。私が担当した子はハーフの子で英語と日本語が混ざっていまい中々言葉が出てこない状況でした。相手の子はいつも一緒にいる子なので、毎回同じ保護者に「すみません、、、」と謝る日々。噛みつきや引っ掻きが続くと保護者との信頼関係にも響いてきますよね。なぜ噛みつき・引っ掻きが起こるのか相手の保護者にもやってしまった子の保護者にも説明していくことが大切です。
まとめ
噛みつき・引っかきは、多くの場合「悪いことをしている」のではなく、「まだ気持ちをうまく表現できない」というサインです。起きてしまった後の適切な対応はもちろん大切ですが、それ以上に、日頃から子どもたちの気持ちに寄り添い、言葉での表現を少しずつ育てていく関わりが、根本的な予防につながります。同じく1〜2歳児の発達課題と向き合うトイレトレーニングの進め方の記事もあわせてご覧ください。


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