静かで穏やかなはずのお昼寝の時間。しかし保育の現場において、実はこの時間帯こそ、最も注意深い見守りが求められる場面でもあります。こども家庭庁が公表している「令和5年教育・保育施設等における事故報告集計」によると、保育施設での死亡事故のうち約半数近くが睡眠中に発生しています。今回は、窒息事故とSIDS(乳幼児突然死症候群)について、公式ガイドラインに基づいた予防策をまとめました。
この記事でわかること
- SIDS(乳幼児突然死症候群)と窒息事故の違い
- 公式ガイドラインに基づいた予防のポイント
- 年齢別に気をつけたいリスクの違い
- 午睡チェックの具体的な進め方と、異変を発見した際の対応
この記事は、現役保育士(保育士歴6年)の「あやせん」が執筆しています。詳しいプロフィールは運営者情報をご覧ください。
SIDSと窒息事故、何が違うのか
こども家庭庁の情報によると、SIDS(乳幼児突然死症候群)とは、何の予兆や既往歴もないまま乳幼児が死に至る、原因のわからない病気とされています。窒息などの事故とは異なる病気ですが、どちらも睡眠中に発生するという共通点があり、現場での注意点にも重なる部分が多くあります。
令和6年には55名の乳児がSIDSで亡くなっており、乳児期の死亡原因としては第3位となっています。SIDSの予防方法は確立していませんが、研究により発症のリスクを下げられることが分かっているポイントがあります。
公式ガイドラインに基づく予防のポイント
こども家庭庁は、SIDSの発症リスクを下げるポイントとして「あおむけ寝」「母乳育児」「禁煙」の3つを挙げています。保育園でコントロールできる範囲は限られますが、保護者への情報提供も含めて、保育士として押さえておきたい内容です。
①あおむけに寝かせる
医学上の理由でうつぶせ寝を勧められている場合を除き、1歳になるまではあおむけに寝かせることが重要です。あおむけ寝は、うつぶせ寝と比べてSIDSの発症率が低いことが研究で分かっており、睡眠中の窒息事故を防ぐ上でも有効とされています。
②安全な睡眠環境を整える
大人用の布団ではなく、乳児用の固めの敷布団・マットレスを使用しましょう。鼻や口がふさがれないよう、ふかふかした布団やぬいぐるみ、よだれ掛けなど首に巻き付く可能性のあるものは、睡眠中には避けることが推奨されています。掛け布団は、赤ちゃんが自分で払いのけられる軽いものを選びましょう。
③一人にしない
睡眠中であっても、必ず保育者の目の届く環境で見守ることが大前提です。
④母乳育児・禁煙(家庭への情報提供として)
母乳で育てられている赤ちゃんはSIDSの発症率が低い傾向があること、また保護者の喫煙(妊娠中を含む)がSIDSのリスクを高めることが分かっています。これらは家庭での取り組みが中心になりますが、保護者会や園だよりなどで伝える機会があると良いでしょう。
年齢別に気をつけたいリスクの違い
0歳児
最もリスクが高い時期です。特に生後2〜6ヶ月頃はSIDSの発症が多いとされており、うつぶせ寝の回避と、こまめな呼吸確認が欠かせません。入所して間もない時期は、環境の変化によるストレスも加わるため、より一層の注意が必要です。
1〜2歳児
自分で寝返りを打ったり、布団を引き寄せたりする力がついてくる時期です。窒息のリスクは0歳児より下がりますが、布団やタオルが顔にかかっていないかの確認は引き続き重要です。
3歳児以上
基本的な呼吸確認の頻度は下がる園が多いですが、体調不良時(発熱など)は、年齢に関わらず様子の変化に注意を払いましょう。特に冬場は感染症による発熱・体調急変も増えるため、冬に流行する感染症と保育園での対策もあわせて確認しておくと安心です。
午睡チェックの進め方
こども家庭庁(旧厚生労働省)が定める「教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン」では、睡眠中の子どもの状態をチェック表を用いて把握することが求められています。全国一律の分数が定められているわけではありませんが、東京都などの自治体が示す目安として、0歳児は5分に1回、1・2歳児は10分に1回のチェックが現場で広く実践されています。以下のような項目を、この頻度を目安に確認するのが基本です。
- 呼吸をしているか(胸やお腹の動きを確認)
- 顔色(唇の色を含む)に異常がないか
- 寝ている体勢(うつぶせになっていないか)
- 汗の量・体温に異常がないか
- 布団やタオルが顔にかかっていないか
特に入所して間もない時期の乳児は、環境の変化によるストレスや体調の変化が起きやすいため、複数の目による観察と、より一層の注意が必要とされています。
異変を発見したときの対応
呼吸がない、顔色が明らかに悪い、体が冷たいなど、異変に気づいた場合は、以下の手順で速やかに対応します。
- 大きな声で周囲の職員に応援を呼ぶ
- 子どもの反応を確認し、必要に応じて救急要請(119番)を行う
- 反応がない場合、心肺蘇生(胸骨圧迫・人工呼吸)を開始する
- 並行して、園長・主任へ報告し、保護者への連絡準備を進める
いざという時に迷わず動けるよう、日頃から園内で心肺蘇生の研修や訓練を受けておくことが非常に重要です。AEDの設置場所も、全職員が把握しておきましょう。
記録を残すことの重要性
午睡チェックの結果は、必ずチェック表に記録として残しましょう。記録を残すことで、異変への早期の気づきにつながるだけでなく、万が一の事故が発生した際の検証にも役立ちます。声に出して指差し確認するなど、確実な確認を行う習慣づけも大切です。日々の記録を残す習慣は、噛みつき・引っかきなどの他の事故記録にも共通する、保育の安全管理の基本でもあります。
よくある質問
Q. 午睡チェックは何分おきに行えばいいですか?
A. 全国一律の基準はありませんが、東京都などの自治体が示す目安として、0歳児は5分に1回、1・2歳児は10分に1回のチェックが広く実践されています。人手が限られる園では、午睡チェックセンサーなどのツールを併用するケースも増えています。
Q. うつぶせ寝に気づいたらどうすればいいですか?
A. 医学的な理由がない限り、気づいた時点ですぐにあおむけに戻しましょう。特に0歳児は自分で顔の向きを変えられないことがあるため、こまめな確認が欠かせません。
Q. SIDSは完全に予防できますか?
A. 発症の原因は完全には解明されておらず、確実な予防法は確立されていません。ただし、あおむけ寝・母乳育児・禁煙といった要因でリスクを下げられることが研究で分かっています。
現場からのひとこと
午睡中は保育士の唯一の自分の仕事ができる時間・・・!連絡帳の記入・製作の準備・行事の準備・書類記入などなど、たくさんの業務をこなさないといけない中で5分に1回のタイマーは正直しんどい!
それでも、保護者の元へ元気な子どもたちを引き渡すために午睡チェックだけは絶対に流れ作業にしてはいけないと、強く感じています。
まとめ
お昼寝の時間は、子どもたちにとって大切な休息の時間であると同時に、保育士にとっては最も気を抜けない見守りの時間でもあります。あおむけ寝の徹底、安全な睡眠環境づくり、こまめな午睡チェックという基本を、日々の忙しさの中でも丁寧に積み重ねていくことが、かけがえのない命を守ることにつながります。



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