ひとりの子どもとの関係が、クラス全体を変えた話

現役保育士の保育ブログ 現役保育士ブログ

「先生、◯◯くんがまたひとりで遊んでるよ」
ある日、年中クラスの子がぽつりとそう言いました。
私の心には、少しだけチクリとする感覚がありました。

保育士として今でも、忘れられないのは、
“あの子”との関係づくりが、クラス全体の雰囲気を変えた経験です。


◆「目が合わない」から始まった関係

私が担任していたクラスに、なかなか集団に馴染めない男の子がいました。登園すると一人で好きな絵本のコーナーへ直行。朝の会でも名前を呼ばれても反応が薄く、保育中もおもちゃを強く投げたり、友達の作品を壊してしまうことも。

正直に言うと、当初は「関わるのが難しい子」と感じていました。

けれど、ある朝、その子が私にそっと絵本を見せてくれたんです。
「これ、おもしろいよ」って。

思わず私は、「そっか、先生にも教えてくれるんだね」と返しました。
その瞬間から、少しずつ、私の中の“その子の見え方”が変わりました。


◆“個別に関わる”ことがチーム保育を変える

私の園では、「担当制の保育」とまではいきませんが、一人ひとりをよく見る文化が根付いています。そこで、同僚と連携しながら、その子と1対1で話す時間を少しずつつくるようにしました。

たとえば、

  • 朝の会の前に小さな役割をお願いする
  • 制作のとき、その子が作ったものにコメントしてみる
  • 他の子と一緒に活動できるよう、橋渡しをしてみる

こうした関わりを重ねていくうちに、表情がぐっと増え、行動にも変化が現れました。そして、驚いたのは、その子に対する他の子どもたちの関わり方まで変わったことでした。

「先生、今日◯◯くん、いっしょに折り紙やったよ」
「◯◯くん、かけっこ速くなったね!」

そんな声が自然と子どもたちの間から出るようになったのです。


◆保護者との距離も、子どもがつないでくれる

その子のお母さんは、最初こそ少し遠慮気味に感じました。ですが、変化が見えてきた頃から「最近、保育園で楽しそうにしているみたいで」と、笑顔で声をかけてくださるようになりました。

子どもの表情が変わると、保護者の安心にもつながる。
そのことを、あらためて実感しました。


◆ひとりとの関係が、クラスの“空気”を変える

集団保育の中で「どうしても目立ってしまう子」や「関わるのが難しい子」がいるとき、私たちはつい「クラス全体をどうにかしなければ」と思いがちです。

でも、あのとき学んだのは、
ひとりの子との関係を大切にすることが、やがて全体に波及していくということ。

それは保育士という立場にしかできない、とても尊い“仕事”のひとつだと思います。


◆さいごに|保育は「待つ」力も必要

保育は一方的に与えるものではなく、子どもと一緒につくっていくもの。
ひとりの子との関係性が、こんなにも全体に影響するのだと、私はこの経験で知りました。

もし今、関係づくりに悩んでいる保育士さんや実習生の方がいたら、
「焦らなくていい。ひとりの子とちゃんと向き合うことが、保育のはじまりになる」
そんなふうに伝えたいです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました